少し前に
べた~っと開脚
がブームになりました。
当時はフィットネスクラブのストレッチエリアで、やたらと開脚をしている人をお見かけしました。
今でもたまに
開脚ができるようになりたいんです
と言うご依頼をいただくことがあります。
が、ダンサーやヨガインストラクターなど、職業柄求められる方以外の開脚目的の指導はお断りしています。
股関節の可動域(正常値)
ベターと開脚をするためには、さまざまな筋肉の柔軟性が必要です。
ですが、多くの方は一生懸命、股関節を開こうと試みます。
中には股関節を床にぎゅうぎゅう押し付けたり、壁に向かって脚を広げている人まで。。。
股関節の可動域は自然に開いて90度が正常値です。
ヨガやストレッチが習慣化している人や柔らかい人は140度~160度くらい行く場合もあるでしょう。
正常値が90度ですので、180度開脚をすることは、正常な可動域の倍広げていると言うことです。
股関節の可動域が重要な理由
股関節に限らず、各関節は身体を正常に保つためにそれぞれ可動域が決まっています。
例えば膝をイメージして下さい。
基本的に膝は一方方向にしか曲げることが出来ません。
※先天的、または後天的にある程度、反対方向に曲がる人もいます
もし、この膝が反対側にも曲がってしまったら、立つとき、歩く時に、カラダを真っすぐに支えることが難しくなります。
そもそも安定しないので膝がかくかくして立ったり、歩くことが困難でしょう。
このように、関節はカラダの動きをスムーズにするために動かしたり、制御する役割があるのです。
180度開脚はこの制御機能を大幅に超えることになります。
要は怪我をしやすくなると言うことです。
小走りをしたり、急にストップをする時のブレーキが利きにくくなり、
他の部位にストレスをかけたり、股関節そのものに強いストレスをかけてしまいます。
ベターっと開脚が出来る人は、
・股関節がゆるい(腱、靭帯、関節包が緩んでいる)もしくは関節そのものの結合が浅い
・殿筋など、股関節に関係する筋力低下(機能低下)
・生まれ持ったもの、もしくは職業、運動歴などによるもの(体操、新体操、バレエ、ダンス、ヨガなど)
が考えられます。
ベターっと開脚に憧れて、頑張って股関節を伸ばすことは、股関節に付着している周辺組織(腱・靭帯、関節包)も伸ばしている可能性があり、一度、伸びてしまった周辺組織を元に戻すことは困難です。
ベターっと開脚のもう一つのリスク
ベターっと開脚をするためには、骨盤周りの筋群の柔軟性も関係してきますが、
多くの方が股関節を一生懸命に引き伸ばそうとしています。
仮に、股関節の可動域が広がり、周辺筋群も伸びたとしても、そこだけ柔軟だとしたら怪我の元です。
カラダは全身が繋がっていて、それぞれの組織がバランスをとっています。
一部だけが柔軟になれば、そのバランスが崩れると言うことです。
ベターっと開脚がブームになってから、恐らくそれが原因と思われる怪我で来院する人も増えました。
ぎっくり腰、腰痛、股関節痛、膝痛などが主な痛みの症状です。
中には、ベターっと開脚本を見ながらやった翌朝にぎっくり腰になり、
治癒に1ヶ月かかりました(1週間は寝込んでいたそうです)。
普段からカラダが硬いことにコンプレックスがある場合、開脚ができることは憧れになるでしょう。
ですが、一般の人がそこまで関節を広げることのメリットは何もありません。
カラダは安定性と可動性のバランスで出来ています。
柔軟性を高めたい場合は、どこか一か所にフォーカスするのではなく、
全身の繋がりや筋力、動作を考慮しながらトレーニングをすることをお勧めします。